現役便利屋が語る「便利屋あれやこれや」シリーズ。便利屋にも得手不得手や、損得勘定はあります。断りずらい依頼では、見積りでその意思表示をすることも・・・?

 みんな同じ武器を使いやがった!...便利屋が見積もりで断る時

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便利屋と言う仕事をしているヤツ(僕も含めて)は頼まれた仕事は原則断らない。(犯罪は別ですが)
もちろん、便利屋と言う看板を掲げているから「出来ない」はメンツにかかわる。

でも、断らないが断る方法も持っている。
それが「見積りだ」

「見積り無料って書いてあったので一度見に来てほしいんですけど」
「はい、どんな用事でしょうか?」
「家が散らかってるからキレイにしてほしいの」

住所を聞いて見積りの日時を決めて、当日。
○○マンションの1階だと聞いていたが、しまった部屋番号を聞くのを忘れていた。
が、依頼主の家はすぐにわかった。

「異臭」だ。
まだ、マンションの近くだと言うのにスエた臭いが漂っている。
トラックをとめると、近所のおばさんが近寄ってきた。

「掃除に来てくれたの、頼むから早くお願い」
「いえ、まだ、見積り段階で」

依頼主の家に近づくにつれて異臭はきつくなる。
そしてなんと、廊下にはずらりとゴミ袋。

依頼主の家の前だけではない。
ほぼ3軒分の廊下をゴミ袋が占領している。
もうこのあたりは強烈な臭いだ。

目が痛い。
覚悟をしてえーいとばかり家に入ると
「ぶーんぶーん」
無数のハエが家の中を飛び回っている。

そのハエ屋敷の床に子供が3人。時々、手でハエをはらいながらポータブルのゲームをしている。
「近所のおばさんたちがうるさいのよ」と奥さん。

奥の方にどう見ても素人さんではなさそうな男。
こちらを鋭い眼でみやる。

これはいかん、帰ろう。
よその家の前の廊下にまでゴミを置くほどの一家だ。
かかわっちゃいかん。

「ゴミ捨てて、掃除してだいたいいくら位かかる?」
と、低い声で奥の男。

ここで、断れば何を言われるかわからない。
ここは便利屋の最後の武器「見積額」

ここを全部キレイにすればだいたい相場で5万円ってところか。
ならば、
「そうですね。全部キレイにして、10万円ってところでしょうか」

「なにー、バカなこと言うな、帰れ。ほかの便利屋に頼む」
と、奥の男。
ほっ、作戦成功。
これでかかわらずに済む。

しかし、それから数日後
「やっぱりあなたとこが一番安かったわ、いつ来てくれる」
と、あの奥さん。

しまった、ほかの便利屋も同じ武器を使いやがった!

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