現役便利屋が語る「便利屋あれやこれや」シリーズ。何度も日時変更を繰り返された「壁の穴の補修」という依頼の顛末とは?
壁の穴
スポンサードリンク
3度の時間変更、そして1度のすっぽかし。
依頼の内容は「壁の穴の補修」
これだけ時間を守らないのは当然、理由があります。
しかし、相手の女性はすっぽかそうが時間を変えようが、必死の声で電話をかけてきます。
「どうしても今月中に壁の穴を修理しないと、この家を出て行けないんです」
やっとのことで依頼者の女性との時間が合って、マンションに入るとまったく家具はなし。
「この壁の穴を修理しないと出てはいけないと大家さんに言われたんです。そして、明日が最後なんです」
壁の穴の位置は僕の胸あたり。
どう考えても転んだりしてできた穴ではありません。
聞いていいかどうか迷いながら依頼者の女性にそれとなく聞いてみました。
「これまでいろいろ家の修理をしていますが、この穴はかなり硬い物でなくてはあきませんよね」
と、その女性
「バットです」
「バット?」
「金属バットです」
「野球の練習か何かですか?」
「いえ、同居してた男が私を殴ろうとして、よけたら壁に当たったんです」
「............」
それからの時間の長かったこと長かったこと。
ホームセンターに行って接着剤や塗料を買って、慌てて女性のマンションに戻っての必死の補修作業。
暴力男がいきなり入って女性をバットで殴らないか、いや、僕もついでに殴られないかとビクビクものの大急ぎの作業。
何とか壁の穴はきれいに埋まって、ほっとした女性の表情は今でも忘れられません。
まだ、便利屋を始めた頃の話です。