現役便利屋が語る「便利屋あれやこれや」シリーズ。ゴミ屋敷の住人よりも、潔癖症の人のほうが可哀想?悩みの少ない人生が幸せとするのなら、潔癖症のほうが悩んでる時間が多そうなので不幸なのかもしれません。
ゴミ屋敷の反対側の人は可哀想?
足の踏み場もないほどムチャクチャになったゴミ屋敷。
そんな家を片付けている時、こんなになっても何もできない人って、本当にかわいそうだ。
そう思う。
でも、実はもっとかわいそうな人がいる。
ゴミ屋敷の反対の人だ。
「潔癖症」
ハウスクリーニングの依頼の中でも時々、潔癖症の人にあたる。
「汚れてきたので家ごとクリーニングをしてくれない。なんだか気になって眠れないの」
また、ゴミ屋敷の大掃除か、そう思い、下見に行くと、まったくもって汚れていない。
僕の家よりもよっぽどキレイだ。
ところが依頼主は言う。
「ここに来た時はもっときれいだったのに、こんなになっちゃって」
どこがこんなになったか、僕にはわからない。
が、仕事は仕事だ。
掃除のおばさん2人引き連れて当日。
おばさんたち、家に入ると立ちすくんでいる。
「どこをクリーニングするの?」
「だから、こんなになっているんで、キレイにするわけ」
指示をしている僕自身、何を言っているかわからない。
とりあえず、こんなになっている箇所がわからないので隅から隅まで3人で拭く、掃く、磨く。
だが、ゴミ屋敷ならみるみるきれいになっていくのだが、ここはそうではない。
どこがキレイになったのか掃除をしている自分ですらわからない。
とは言え、一生ここで掃除をし続けるわけにもいかないので、ひとしきり作業を終えて、不安なまま、依頼主の携帯に終了報告。
『あそこはダメだとか、ここをもっととか言われるんだろうなあ』
依頼主が来るまでの緊張感はすごかった。
そして依頼主到着。
家に入るなり、
「あらー、あんなになってる」
僕には『あんな』がどんなかわからない。
「ありがとうね、また、来月もお願いするわ」
「来月もですか?」
「だって、また汚れたら気持ちが悪いでしょ」
と、上等な封筒にクリーニング代金50,000円
来月も仕事をもらえたのはうれしいが、どうも後味が悪い。
この家を今度はどこまで『あんなに』すればいいかが分からない。
キッチンか?
トイレか?
頭の中で家の隅々を思い浮かべては、シンクの隅はもっと磨けばキレイになるはずだ。
いやいや、廊下のワックスの種類を変えてみようか?
その夜、僕はなかなか寝れないで......。
おっと、僕の方が潔癖症になってしまった。